「フリーダイビング アプリ」で検索すると、タイマー、呼吸法アプリ、テーブル作成ツール、ダイブコンピューターの連携アプリなどが並び、どれも息止めの記録が伸びると謳っています。その多くは十分にまともなアプリです。問題は、それぞれが解決しようとしている課題が違うこと、そしてどれを選ぶかによって、この先何か月もの練習の進め方が決まってしまうことです。
このガイドは、陸上でスタティックアプネアを練習している人、ひとりで、あるいはプールでの練習の合間にトレーニングしていて、きちんとした方法論を支えてくれるツールを探している人に向けて書いています。重要な基準を挙げ、その理由と、それぞれで何を確認すべきかを説明します。
Anima Apneaは私たちのアプリで、私はその創設者です。このガイドを宣伝ではなく役に立つものにするため、他社の特定のアプリを評価したりランク付けしたりはしません。ツールの種類を説明し、私たちのアプリを含めどのアプリにも当てはめられる基準を示します。Anima Apneaの節では、できることとできないことの両方を挙げています。
4種類のアプリ、4つの異なる役割
機能を比べる前に、今見ているアプリがどの種類に属するのかを把握しておきましょう。どの種類にも得意分野がありますが、すべてをこなせるものはありません。
| 種類 | 得意なこと | よくある弱点 |
|---|---|---|
| シンプルなタイマー | 1回の息止めを手軽に無料で計測 | テーブルがない、履歴が乏しい、収縮のデータがない |
| テーブル系アプリ | 合図付きでラウンドを計測するCO2・O2テーブル | プリセットが自分の記録と連動していないことがある |
| 呼吸法アプリ | ガイド付きのゆっくりした呼吸とリラクゼーション | 息止めトレーニングを前提に設計されていない |
| ダイブコンピューターのアプネアモード | 水中での深度、潜水時間、水面休息の記録 | ドライトレーニングのコーチではない。水中ではバディが必要 |
主に陸上で練習するなら、トレーニングとしての価値があるのは2番目の種類です。呼吸法アプリは補助として優れていますし、講習を終えてバディと一緒に海に出るようになれば、ダイブコンピューターが適したツールになります。このガイドの以降の部分では、ドライでのスタティックトレーニングに絞って話を進めます。
本当に重要な10の基準
すべての基準が同じ重みを持つわけではありません。下の図では基準を3つに分けています。左の列は、そもそもアプリがきちんとした練習方法を支えられるかどうかを決めるもの。中央の列は、何か月にもわたって練習を続けやすくするもの。右の列は、あなたのデータとお財布を守るものです。
| 基準 | 重要な理由 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| テーブルの作成 | 適切な刺激を与えるには、テーブルが現在のレベルに合っている必要がある | ホールドとリカバリーが自分の記録から計算され、編集もできる |
| 収縮の記録 | 最初の収縮はCO₂耐性を敏感に反映する指標 | 息止め中にワンタップで記録でき、最初の収縮の時間が保存される |
| 音と振動の合図 | 画面を見ていると意識が冴え、体がこわばる | 目を閉じたままでも分かるカウントダウンとラウンドの合図 |
| 呼吸パターン | 息止め前の落ち着いたゆっくりした呼吸がリラックスの土台になる | 複数のガイド付きパターン、時間のカスタマイズ、息止め前のブリーズアップ |
| プランと段階的な進行 | 構成がないと、停滞するか練習しすぎるかのどちらかになりやすい | 休息日と再測定日を組み込んだ数週間単位のプラン |
| 統計 | アプネアの上達はゆっくりで、見逃しやすい | ベストタイムだけでなく、日・週・月ごとの履歴 |
| オフライン利用 | 練習するのは横になれる場所であって、電波が届く場所とは限らない | 通信に依存しない基本タイマー |
| プライバシーと同期 | 練習の履歴は個人データである | アカウントなしで使え、同期は希望した場合のみ |
| 料金体系 | 課金の壁の位置が悪いと、履歴がアプリに閉じ込められる | 役に立つ無料プランと、何が有料かの明確な説明 |
| 安全に関するメッセージ | 息止めの練習はブラックアウトを起こしうる | 明確なルール:ドライで横になって行う、過換気をしない、水中では決してひとりにならない |
収縮:多くのアプリが見落としている指標
スタティックの息止めには「楽な局面」と「苦しい局面」があり、その境目となるのが生理学的な限界点、つまり横隔膜の最初の不随意な収縮です1。同じ息止め時間で最初の収縮が来るタイミングが遅くなっていれば、たとえ最大記録がまだ伸びていなくても、二酸化炭素への耐性は向上しています。収縮そのものは危険信号ではありません。熟練したダイバーでは、苦しい局面での脳の酸素化が良くなることとも関連しています2。合計時間しか記録しないアプリは、この情報を捨ててしまっているのです。収縮の読み取り方はアプネア中の収縮についてのガイドで解説しています。
目を閉じたままで分かる合図
スタティックアプネアでは、リラックスがすべてです。次の息止めがいつ始まるかを知るために画面をちらりと見なければならないとしたら、意識は冴えたまま、体も少し緊張したままになります。良いアプリは各フェーズの開始と終了を音と振動で知らせてくれるので、目を閉じて静かに横たわったまま、テーブルの進行に身を任せることができます。
正しい呼吸法の練習
吐く息を長くしたゆっくりした呼吸は、生理的にも心理的にも落ち着いた状態と関連しています3。ガイド付きの呼吸パターンがあると便利なのはそのためです。避けたいのは、フリーダイビングと、息止め前の速く強い呼吸を混同しているアプリです。それは過換気であり、呼吸したいという衝動を遅らせるだけで、意味のある量の酸素を増やすことはありません4。本当に役立つパターンについてはブレスワークのガイドをご覧ください。
「テーブル作成」が本来意味すべきこと
多くのアプリが初級・中級・上級のCO2テーブルを用意しています。何もないよりはましですが、固定のプリセットには、あなたの記録が3:30ではなく2:15だということは分かりません。簡単すぎるテーブルは刺激になりませんし、難しすぎるテーブルは毎回のセッションを闘いに変え、緊張することを体に覚えさせてしまいます。
本当の意味でのテーブル作成は、自己ベストを出発点にして、すべての数字をそこから導き出します。CO2テーブルでよく使われる構成は、ホールドを記録のおよそ半分に固定し、リカバリーをラウンドごとに15秒ずつ短くしていくものです。下のスライダーを動かして、記録に応じてセッション全体がどう変わるかを確かめてみてください。
Anima Apneaアプリの記録連動テーブルと同じルールです。ホールドは記録の50%、最初のリカバリーは記録の3分の2(ただし2:00未満にはしない)とし、15秒単位で丸めたうえで、ラウンドごとに15秒ずつ短くします(最短15秒)。
アプリを評価するときは、次の3点を確認しましょう。記録を入力させるか、計測した息止めから記録を設定できるか。あるラウンドが難しすぎたとき、結果を編集できるか。そして、リカバリーを固定してホールドを伸ばしていくO2テーブルも作れるか。アプリの数字を手計算で確かめたい方は、CO2テーブルのガイドで構成を詳しく解説しています。
安全に関するメッセージも機能のひとつ
息止めを指導するアプリには責任が伴います。低酸素による意識消失は前触れなく起こることがあり、水中では一瞬で命に関わります。アプリがこの点をどう伝えているかを見れば、実際に練習している人たちが作ったものかどうかがよく分かります。
息止め前の速い呼吸や強制的な呼吸を勧める、浴槽の中や立った姿勢での息止めを提案する、最大努力のトライを毎日の練習として扱う、あるいはアプリがあればバディなしでも水中練習が安全になるかのように示す。ドライトレーニングは横になるか座って行うものであり、水中では訓練を受けたバディの代わりになるものはありません。
- アプリの呼吸エクササイズが何を勧めていても、息止めの前に決して過換気をしないでください。
- めまい、手や唇のしびれ、視覚の変化など、いつもと違う感覚があればすぐに中止してください。
- 運転中、入浴中、そのほかブラックアウトが危険につながる場所では絶対に練習しないでください。
- 心臓や肺の疾患、てんかんがある方、妊娠中の方は、始める前に医師に相談してください。
Anima Apneaに向いていること、向いていないこと
このチェックリストを私たち自身のアプリに当てはめると、次のようになります。ここに挙げた内容はすべてアプリ上で確認できます。
- スタティックアプネアのタイマー:収縮ごとにワンタップで記録。最初の収縮の時間が、自己ベストやセッション履歴とともに保存されます。
- 記録に合わせたテーブル:CO2テーブルは上の計算機と同じルールで8ラウンド。O2テーブルはリカバリーを2:00に固定し、ホールドを伸ばしていきます。ホールド、リカバリー、ラウンド数はすべて編集できます。
- 音と振動の合図:セッション中も目を閉じたままでいられます。
- ガイド付き呼吸:腹式呼吸(吸う4秒、吐く8秒)、ボックス呼吸(4-4-4-4)、4-7-8呼吸、カスタムパターン、そして息止め前のブリーズアップ。
- 4週間プラン:週3〜6回のセッションで、2週目と4週目の終わりに記録測定があります。
- 統計とグラフ:息止め、テーブル、収縮を日・週・月ごとに表示。連続記録(ストリーク)、毎日のリマインダー、ホーム画面ウィジェットも備えています。
- プライバシー:アカウントなしで使えます。AppleまたはGoogleでのサインインは任意で、クラウド同期のためだけに使われます。
- 料金体系:ダウンロードは無料。一部のカスタマイズ機能はPremiumに含まれます。
できないことも、同じくらい大切な情報です。Anima ApneaはiPhone専用のアプリで、Android版やウェアラブル端末向けのアプリはありません。センサーを使わないため、心拍数や血中酸素飽和度は測定しません。また、ドライでのスタティックトレーニングのためのアプリであり、水中での潜水記録には向いていません。これらのどれかが欠かせないという方には、別の種類のツールのほうが合っているでしょう。
最良のアプリとは、週に3回、あなたを横にならせて目を閉じさせ、今の実力に合ったテーブルを用意してくれるアプリです。
1週間で見極める方法
機能一覧で分かることには限りがあります。本当のテストは、ふだんどおりの練習を1週間続けてみることです。私たちのアプリも含め、どのアプリにも使えるシンプルな手順を紹介します。
- 1日目:基準となる記録を測る数分間落ち着いた呼吸をしたあと、横になった姿勢で安全に自己ベストを測ります。アプリでその作業がしやすいか、記録が保存されるかを確認しましょう。方法は自己ベストの測り方で解説しています。
- 2日目:CO2テーブルを実行するテーブルが自分の記録から作られているか、目を閉じていても合図が分かりやすいか、集中を切らさずに収縮を記録できるかを確認します。
- 4日目:呼吸ツールを試す短いセッションの前にゆっくりした呼吸パターンを使ってみます。時間を調整できるか、ガイドが落ち着いたものかに注目しましょう。
- 6日目:2回目のテーブルを行い、履歴を見る最初の収縮の時間も含めて、2回のセッションを比較できますか。できないなら、そのアプリは今後も上達を見せてはくれないでしょう。
- 7日目:地味な部分を確認する何が無料で何が有料か、アカウントが必須かどうか、何か月分ものデータを預けて信頼できるかを確かめます。
始めたばかりの方にとっては、どんな機能よりも、選んだアプリを体系立ったプログラムと組み合わせることのほうが効果的です。初心者向け4週間プログラムでは、その内容を1日ずつ紹介しています。
よくある質問
スタティックアプネアの練習にアプリは必要ですか?
必須ではありません。始めるだけなら、ストップウォッチと鉛筆、印刷したテーブルで十分です。アプリが役に立つのは、手間を減らしてくれるときです。自分の記録からテーブルを作り、目を閉じたままでも分かる合図で各ラウンドを計測し、振り返りに使える履歴を残してくれる。そこに価値があります。
無料のアプリで十分ですか?
多くの場合は十分です。大切なのは、無料版で息止めの計測ができるか、自分の記録をもとにしたテーブルを実行できるか、履歴を残せるかどうかです。何週間分ものデータを積み上げる前に、どの機能が有料なのかを確認しておきましょう。
アプリでフリーダイビングの講習やバディの代わりになりますか?
なりません。アプリにできるのは、陸上でのドライトレーニングを組み立てることです。水中で行う練習には、訓練を受けたバディの見守りが必ず必要です。水中の技術やレスキューを学ぶなら、認定講習を受けるのが正しい方法です。
Anima ApneaはAndroidで使えますか?心拍数は測れますか?
どちらもできません。Anima ApneaはiPhone向けのアプリです。センサーは使っておらず、心拍数や血中酸素飽和度は測定しません。息止めとテーブルの時間を計り、タップで記録した横隔膜の収縮を保存し、上達の経過を記録します。
今のアプリで問題なく練習できているなら、乗り換えるべきですか?
おそらくその必要はありません。今のアプリで安全に、継続して練習できているなら、どんな機能よりも継続のほうが価値があります。乗り換えるのは、欠けている基準が本当に練習の妨げになっている場合だけで十分です。
記録にもとづくテーブル、音と振動の合図、ワンタップでの収縮記録、4週間プラン。iPhoneで無料ダウンロード、アカウント登録は不要です。
参考文献
- Lindholm P, Lundgren CEG. The physiology and pathophysiology of human breath-hold diving. Journal of Applied Physiology, 2009.
- Dujic Z et al. Involuntary breathing movements improve cerebral oxygenation during apnea struggle phase in elite divers. Journal of Applied Physiology, 2009.
- Zaccaro A et al. How breath-control can change your life: a systematic review on psycho-physiological correlates of slow breathing. Frontiers in Human Neuroscience, 2018.
- Craig AB Jr. Causes of loss of consciousness during underwater swimming. Journal of Applied Physiology, 1961.