初めて起こったときは、戸惑うものです。落ち着いて息を止めていると、突然おなかがぐっと内側に引き込まれ、喉が締まり、数秒後にもっと強くまたやってくる。体が反乱を起こしたように感じます。多くの初心者はそこでやめてしまい、何かがおかしくなったのだと思い込みます。
何もおかしくなってはいません。コントラクションは息止めの中で最も予測しやすい出来事の1つであり、それを理解することはスタティックアプネアにおける最大の心理的な一歩の1つです。この記事では、コントラクションとは何か、何が引き金になるのか、なぜ酸素が尽きかけていることを意味しないのか、どうすれば力を抜いたままやり過ごせるのか、そしてトレーニング指標としてどう使うのかを説明します。
コントラクションとは何か
科学文献では、コントラクションは不随意呼吸運動と呼ばれます。気道が閉じたまま、横隔膜と、程度は小さいもののほかの吸気筋がリズミカルに収縮する現象です1。脳幹の呼吸中枢が呼吸の指令を出し、筋肉はそれに応えますが、空気は動きません。おなかや胸の下のほうがぐっと動くように感じ、ときに喉が反射的に締まります。
主な引き金は化学的なものです。息止め中、CO₂が血液中にたまり、血液を酸性に傾けます。脳幹と頸動脈にある化学受容器がこれを感知し、呼吸の駆動を強めます。息止めの後半には酸素の低下もこの駆動に加わり、肺の容積も関わります。一般に、息をいっぱいに吸って始めた息止めは、部分的な吸気で始めた息止めよりも限界点が遅くなります1。駆動が十分に強くなると、横隔膜の随意的なコントロールを上回り、コントラクションが始まります。
限界点:イージーフェーズとストラグルフェーズ
研究では、長い息止めは2つの部分に分けて説明されます1。まず訪れるのがイージーフェーズで、不快感はほとんど、あるいはまったくありません。最初の不随意呼吸運動が生理学的限界点を示します。その後に続くのがストラグルフェーズで、呼吸すると決めるまで、コントラクションが繰り返し起こり、頻度が増し、たいていは強くなっていきます。その決断は、生理学的限界点と区別するために、慣習的限界点と呼ばれることがあります。
初心者では、最初のコントラクションがやめる理由に感じられるため、ストラグルフェーズは短いことが多いです。トレーニングを積んだアプネアの選手では、息止め全体の大きな割合を占めることがあります2。高いCO₂と低下していく酸素の組み合わせに耐える能力は、酸素の貯蔵量や潜水反射と並んで、スタティックアプネアのパフォーマンスを左右する主な要因の1つとされています4。言い換えれば、スタティックアプネアの上達の大部分は、最初のコントラクションの後に起こるのです。
コントラクションが酸素の警報ではない理由
コントラクションを直感的に解釈すると、「空気がなくなりかけている」となります。生理学の答えは違います。コントラクションは主にCO₂によって引き起こされるため、図1が示すように、最初のコントラクションはたいてい血中酸素飽和度がまだ高いうちにやってきます。この信号が伝えているのはCO₂が上昇しているということであり、酸素が尽きかけているということではありません。
コントラクションが役に立ちうることを示す証拠さえあります。トップレベルの息止めダイバーを対象にした研究で、Dujicらは、ストラグルフェーズ中の不随意呼吸運動が脳の酸素化の改善と関連していることを見出しました3。コントラクションが生み出す胸腔内圧の変動が、ポンプのように血液循環を助けているようです。これはトップレベルのダイバーで観察されたものなので過大に解釈すべきではありませんが、シンプルな考えを裏づけています。コントラクションは敵ではありません。
コントラクションが教えてくれるのは、CO₂が上昇しているということ。酸素が尽きかけているとも、あなたが安全だとも教えてはくれません。
この最後の点も同じくらい重要です。コントラクションは、どちらの方向にも安全の目安にはなりません。コントラクションがないことは、酸素が十分にあることを意味しません。息止めの前に過換気をすると、CO₂が排出されてコントラクションはずっと遅れてやってきますが、酸素の蓄えはほとんど変わっていません。これこそ多くのブラックアウトの背後にあるメカニズムで、ブラックアウトの予防の記事で詳しく説明しています。
コントラクションとの付き合い方
コントラクションは反射です。止めることはできませんが、それがどれだけ負担になるか、どう感じるかは大きくコントロールできます。陸上のスタティック練習で特に効果的な方法を紹介します。
- 予期して、名前をつける。待っていたコントラクションは、不意に来るものよりはるかに動揺しにくいものです。来たら、評価せずに心の中で「来た」と確認します。
- おなかを動くままにする。本能的には、衝撃に備えて腹筋を固めたくなります。逆をしましょう。おなかを柔らかく保ち、横隔膜を動かせておきます。抵抗すると筋肉の緊張が増し、1回1回のコントラクションが強く感じられます。
- 緊張をスキャンする。コントラクションはほかの筋肉も巻き込みがちです。あご、肩、手、額。1回ごとにこれらの部位を確認し、力を抜きます。ゆるんだ筋肉は酸素の消費が少なくて済みます。
- つばを飲み込んでみる。そっと飲み込むと喉がゆるみ、コントラクションが和らぐと感じる人もいます。誰にでも効くわけではありませんが、陸上練習で試すぶんには何の損もありません。
- 頭に仕事を与える。コントラクションを数える、ゆっくり数を数える、なじみのある場所を思い浮かべる。注意を不快感からそらせます。
- 息止めの前に限度を決める。たとえば一定の時間や一定のコントラクション回数など、いつやめるかを事前に決めておきます。その判断は、ストラグルフェーズのさなかよりも息止めの前のほうが冷静にできます。
経験豊富なスタティックの選手の中には、息止めの終盤に少量の空気を吐いてコントラクションを和らげる人もいます。ただしそれは肺の空気量、ひいては酸素の蓄えも減らします。初心者向けの技術ではなく、深度のあるダイビングでは使うべきではありません。ひとりでの陸上練習では、リラックスに徹してください。
これらすべてを練習する最良の方法はCO₂テーブルです。短いリカバリーによって、最大値より十分に短い息止め時間のまま、後半のラウンドでコントラクションが起こります。管理された環境で、1回のセッションの中で何度も、コントラクションの中で力を抜く練習ができるのです。
トレーニング指標としての最初のコントラクションまでの時間
最大息止め時間は、ばらつきの大きい数字です。気分やモチベーション、その日どこまで追い込む気があるかに左右されますし、頻繁に測るべきものでもありません。最初のコントラクションまでの時間は、はるかに客観的です。やる気があってもなくても、それは向こうからやってきます。比較可能な条件で測れば、CO₂耐性の変化を示す最良の指標の1つになります。
Anima Apneaのスタティックタイマーでは、コントラクションのたびに画面をタップします。アプリは最初のコントラクションの時刻を記録し、コントラクションは息止めやテーブルと並んで、日・週・月ごとの統計に表示されます。頭の中で数えたり、息止めの後にメモしたりする必要はありません。
| 指標 | 反映するもの | 使い方 |
|---|---|---|
| 最初のコントラクションまでの時間 | CO₂耐性、イージーフェーズの終わり | 同じ種類の息止めで、週ごとに比較する |
| コントラクションの回数 | ストラグルフェーズの長さと強さ | 同じ息止めで回数が減れば、適応のサイン |
| ストラグルフェーズの長さ | 最初のコントラクションから息止め終了までの時間 | コントラクションの中で力を抜けるようになるにつれて伸びる |
| 息止めの合計時間 | 全体的なパフォーマンス | 最大値の計測はたまにだけ。日々の練習はほかの指標を目安にする |
トレーニングで始まりはどう変わるか
定期的に練習すると、通常2つのことが変わります。同じ種類の息止めで最初のコントラクションが遅くなる傾向があり、その後に続くコントラクションもそれほど圧倒的に感じなくなります。その一部は高いCO₂への生理学的な適応であり、一部は学習によるものです。コントラクションが無害だとわかると、それを耐えがたく感じさせていたストレス反応が起こらなくなるのです2。始まりがどれだけ速く、どれだけ遅くなるかは人によって大きく異なります。だからこそ、見る価値があるのは自分自身の曲線だけです。
その曲線を意味のあるものにするには、条件をそろえます。同じ姿勢、同じような時間帯、同じ準備、同じ種類の最後の吸気。食後すぐの息止めは避けます。睡眠、ストレス、疲労による日々のばらつきは想定内とし、個々のセッションではなく数週間の傾向を見てください。週に2〜3回のCO₂セッションに、ときどきO₂テーブルを組み合わせるのがよいリズムです。
最初のコントラクションまでの時間の伸びは、緩やかなものです。もし突然いつもよりずっと遅く来たら、喜ぶ前に準備を確認してください。息止めの前に速く、あるいは深く呼吸すると、CO₂が下がってコントラクションは遅れますが、本当の蓄えは何も増えていません。
コントラクションと安全
コントラクションに耐えることを学ぶのはスタティックアプネアのトレーニングの核心であり、だからこそ安全な環境で行わなければなりません。ストラグルフェーズを落ち着いて乗り越えられるようになるほど生理学的な限界に近づき、ブラックアウトは何の前触れもなく起こりえます。
ひとりで練習するのは陸上だけ、安全な場所で横になるか座った姿勢に限ります。立ったまま、運転中、入浴中、どんな水中でも行わないでください。過換気は絶対にしないこと。水中では、訓練を受けたバディが最初から最後まで見守っている場合に限ります。しびれ、視覚の変化、混乱、そのほかいつもと違う感覚に気づいたら、ただちに息止めを中止してください。心臓や肺の疾患、てんかんがある方、妊娠中の方は、事前に医師に相談してください。
よくある質問
コントラクションは危険ですか?
いいえ。CO2の上昇に対する正常な反射反応であり、酸素が尽きかけているサインではありません。安全面で重要なのは練習する場所です。陸上で横になって行うか、水中なら訓練を受けたバディがいる場合に限ります。
日によってコントラクションが早く始まるのはなぜですか?
疲労、ストレス、食後間もないこと、睡眠不足、慌ただしい準備は、どれもコントラクションを早める原因になります。似た条件で行ったセッション同士を比べ、1日単位ではなく数週間の傾向を見てください。
コントラクションが起こらないようにできますか?
安全な方法ではできません。すぐに大きく遅らせる唯一の方法は過換気ですが、これはCO2の警報を消し、ブラックアウトのリスクを高めます。トレーニングを続ければ、コントラクションは少しずつ遅くなり、耐えやすくなります。
練習ではコントラクションを何回まで受け入れるべきですか?
万人に共通する回数はありません。陸上のCO2テーブルでは、最後のほうのラウンドでいくらかのコントラクションが出るのが普通です。息止めの前に自分の限度を決め、しっかり力を抜き、いつもと違う感覚があればすぐに中止してください。
コントラクションがまったく来ないのは普通ですか?
短い息止めなら普通です。長い息止めでコントラクションがない場合は、事前に呼吸しすぎた結果であることが多いです。それはありがたいことではありません。最も重要な警告信号が切られているということです。
Anima Apneaは、スタティックの息止めのたびに最初のコントラクションまでの時間を記録し、コントラクションを日・週・月ごとにグラフ化し、自己ベストに合わせたCO₂・O₂テーブルを作成します。
参考文献
- Lindholm P, Lundgren CEG. The physiology and pathophysiology of human breath-hold diving. Journal of Applied Physiology, 2009.
- Bain AR, Drvis I, Dujic Z, MacLeod DB, Ainslie PN. Physiology of static breath holding in elite apneists. Experimental Physiology, 2018.
- Dujic Z et al. Involuntary breathing movements improve cerebral oxygenation during apnea struggle phase in elite divers. Journal of Applied Physiology, 2009.
- Schagatay E. Predicting performance in competitive apnoea diving. Part I: static apnoea. Diving and Hyperbaric Medicine, 2009.